学士
マルチモーダルから考察するアトモスフィア ──「あたたかさ」を事例として
エルゴノミックデザインスタジオ
#人間中心デザイン#UXデザイン#ユニバーサルデザイン
図書館の凛とした空気感、お祭りの熱気、カフェの落ち着く感じ。私たちは空間全体に漂う何かを直感的に感じ取っている。こういった日常的には雰囲気とも呼ばれるものを「アトモスフィア」と呼び、人がそれをどのように経験しているのかを探った。体験の質が重視されるデザインにおいて、アトモスフィアは無視できない要素である。
アトモスフィアは複数の要素が複雑に関係し合う総合的な体験であるが、本研究では、環境要因が複数の感覚を通して統合的に経験される側面を扱う。これまでの研究は、環境側の条件を変えると印象がどのように変化するかに注目したものが多い。一方で本研究では、環境条件に加え、体験する側の感覚条件、すなわち「どの感覚が利用できるか」が変化したときに、アトモスフィアの経験が変化しうるのかに着目した。
実験では、光・音楽・風を操作した環境を用意し、視覚が利用できる場合(暖色ライト/中間色ライト)と、視覚を制限した場合とで、「雰囲気としてのあたたかさ」の評価がどのように変化しうるかを調べた。
結果として、視覚を制限すると全体的にあたたかさの評価は低下する傾向が見られた。特に、音と風が「あたたかくない方向」に一致している条件では、視覚制限時の評価が大きく低下し、中間色ライト条件よりも低い値を示した。このことは、視覚制限が単に「視覚的にあたたかい情報が欠如した状態」ではなく、他の感覚によるアトモスフィアの感じ取り方を変化させている可能性を示している。
一方で、音と風が「あたたかい方向」に一致した条件では、視覚制限時に評価が中間色ライト条件より高くなる傾向は見られなかった。視覚が使えないときに、単純に他の感覚で一致した印象に引っ張られるわけではないのである。
この結果の解釈として、視覚制限時には環境把握に関する不確実性が増し、あたたかいと感じにくい、また、冷たい印象の刺激に対する感受性が高まった可能性が考えられる。
なお、心拍数変化とあたたかさ評価の関係も検討したが、本研究の条件下では明確な対応関係は見られなかった。アトモスフィアは、単純な生理指標のみでは捉えきれない体験である可能性が示唆される。
人のアトモスフィアの感じ取り方は感覚条件によって変化しうる。本研究は、この体験者側の特性に注目し、感覚条件の違いに寄り添った環境設計や、新たなアトモスフィア体験の構想につながる探索的な試みである。
Humans intuitively sense the overall quality of a space. This study conceptualizes this as “atmosphere” and examines how it is formed under different sensory conditions. Assuming atmosphere is a multimodal experience integrating multiple sensory cues, we constructed an environment manipulating light, music, and airflow, and compared evaluations with and without visual restriction. The results suggest that visual restriction does not simply remove visual information, but may change how non-visual cues contribute to atmosphere evaluation. In particular, when non-visual cues were consistent with a cold impression, atmosphere tended to be evaluated as colder under visual restriction. These findings may inform the design of environments and experiences that accommodate different sensory conditions. This study is an exploratory attempt toward understanding how people experience atmosphere under sensory constraints.
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