本研究は〈利他〉という概念に着目し、街を歩きながら〈利他〉的な行為の痕跡を積極的に知覚するという街の見方のマインドセットを多くの人に形成することによって、特に都市部におけるコミュニケーションのきっかけを創出することを目的としたデザインアプローチの探求と実践である。
研究の背景には、私が上京して実感した都市部の希薄なコミュニティへの問題意識、そして自身の専門領域である車が道空間の中心となっている現代の都市への違和感がある。それに対し、自身が地元で経験した、各々の住宅の領域を少しはみ出してはたらく近所間での親切行為の文化〈雪かきのし合い〉の経験を元に、〈利他〉という単語に着目した。
実際に街を歩きながら、〈利他〉的な行為の収集調査を行い、「自分のためにやっていた行動や無意識的なふるまいが他人の思い出や楽しみにもなっている」状態も〈利他〉の一つであると捉え、《無意識の利他》と定義した。これは〈個〉と〈公〉の間の中間領域であると位置付けられ、また他人の存在を意識するというコミュニケーションの第一歩となる。この《無意識の利他》の視点で街を歩く、というマインドセットを形成するため、複数回のワークショップやインタビュー調査を経て、《リタウォーク》というアクティビティの創出と発信のデザインを行った。制作物として、《無意識の利他》の事例を紹介するWebサイトやSNSの運営、街歩きの際の視点のヒントとなるハンドアウトを作成し、誰もが興味を持ちやすく、また実践しやすいアクティビティとなるよう体系化した。さらに、《リタウォーク》の一回の歩行体験を辿るようなナラティブなテキストと写真、音声で構成された鑑賞作品を制作し、〈利他〉的行為の痕跡を積極的に知覚する視点の感覚的な共有を試みた。
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