学士
義肢の使用経験に基づくエンパワメントエコシステムデザインの構築
エルゴノミックデザインスタジオ
#福祉デザイン#人間中心デザイン#UXデザイン
世界的に義肢の需要が増大する一方で、供給体制の逼迫やアクセス格差が深刻な課題となっている。日本においても、義肢装具士の減少や社会保障財源の課題から、供給体制の持続可能性が懸念されている。本研究では,自身の義足ユーザとしての経験から抱いた問題意識に基づき、従来の補装具費支給制度や研究では捉えきれていない、日常生活におけるユーザの「経験」の側面に着目した。本研究の目的は、義肢ユーザの人生全体を通じた経験を包括的に調査・分析し、物理的・心理的なエンパワメントが継続的に生み出されるエンパワメントエコシステムのデザインを提案することである。
調査手法として、先天性四肢欠損の義足ユーザ6名を対象に、未就学期から現在に至るまでの長期的なライフ経験について半構造化インタビューを実施した。得られた逐語録は、時系列および意味的なまとまりに基づいて再構成し、ユーザの経験に関わる人、モノ、サービス、環境などの関係構造を図式化・分析した。分析の結果、製作を担当する義肢装具士の交代時におけるミスコミュニケーションによって要望と異なる義肢になるリスクや、思春期におけるピアコミュニティからの孤立と自己否定、新しい義足への切替時に伴う身体的な不適合の経験の蓄積が心理的な障壁となり、古い義足を限界まで使い続けるなどの実態が明らかになった。
これらの課題に対し、本研究では物理的・心理的側面からの介入による「正の循環」を実現するためのエコシステムデザインを提案した。具体的には、ユーザと義肢装具士間の共通言語の開発による意思疎通の円滑化、偶然の出会いに頼らないシステム的なピアサポートの導入、物理的破損だけでなく医学的・予防的観点(健康維持)に基づく履き替えの動機付けといった介入ポイントを特定した。これにより、ユーザが自身の生活や支給制度に対し、単なる受益者ではなく主体的に参加・選択できる環境が構築される。本研究は、長期的な経験の調査を通じて、義肢ユーザのエンパワメントを実現するための関係構造のモデルを提示しており、持続可能な義肢供給体制と義肢ユーザのより良い生活の構築に向けた新たな視点を提示する。
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