修士
香りのリラックス・集中の効果を活かしたデザイン提案
エルゴノミックデザインスタジオ
#UXデザイン#プロダクトデザイン#人間中心デザイン
本研究では、香りの特性の一つであるリラックス・集中に着目し、香りが人に与える影響を明らかにした上で、その特性を活かしたデザイン提案を行うことを目的とした。まず、香りに関する体験やリラックス・集中に関する体験を把握するため、アンケート調査およびインタビュー調査を実施した。その結果、香り体験の動機には、自身の気分を整える「自分視点」と、周囲からの評価を意識する「他者視点」が存在することが示唆された。また、周囲に影響を与えずに香りを楽しみたいというニーズが確認され、香りは日常のルーティンの中で自然に取り入れられることが望まれていると示唆された。次に、作業中における香り提示が集中状態および行動に与える影響を検証する実験を行った。大学生および大学院生12名を対象に30分間のリサーチ課題を設定し、①香りなし、②常時香り提示、③作業開始15分後から5分間のみ香り提示の3条件で比較した。グレープフルーツの香りを用いて実験を行い、生理指標、主観評価、副次行動を組み合わせて分析した。その結果、提示条件によって集中度や行動に差が見られ、行動数の多い参加者は、③の条件において、香り提示直後に集中度が一時的に低下する一方、作業後半では集中度が高くなる傾向が確認された。また、実験後のインタビューより、香りやその蒸気を意識したという発言や、香りによってリラックスした、気持ちを切り替えられたという発言が得られた。これらより、香りは集中状態の変化に対する気づきを促す要素として機能する可能性が示唆された。
以上を踏まえ、本研究では、「集中の揺らぎに寄り添い、ふとした瞬間に落ち着きを与える体験」をコンセプトとしたディフューザーを提案した。提示方法は、作業開始15分後に5分間提示する20分周期とし、穏やかに介入する構成とした。また、周囲への影響や視覚的負荷を抑えるため、水蒸気を伴わないファン式気化方式を採用した。デザイン提案では、Calm Technologyの考え方に基づき、集中が低下した際にのみ穏やかな変化として知覚される動きを持つ3案を検討した。A案では上下の穏やかな動き、B案ではスリッド越しにファンの動きを見せる動き、C案ではファンの影が下に投影される動きであり、いずれも集中している間は背景化し、集中が揺らいだ瞬間にのみ「ふと」気づかれる存在となることを目指した。
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