修士
河川敷の傾斜空間を活用するどてファニチャーの有用性の検証
インテリアデザインスタジオ
#インテリアデザイン#都市デザイン#ファーニチャーデザイン
近年、河川空間はマルシャやキャンプ場など、様々な方法で活用されている。しかし、その中でも堤防の傾斜部分は、勾配の急さゆえに活用の事例がほとんど見られない。本研究は、この急傾斜を「利用困難な場所」とネガティブに捉えるのではなく、急勾配だからこそ日常にはないワクワク感や新しい身体体験を生み出せるのではないかと考え、始めたものである。
本研究では、河川敷の傾斜空間を積極的に活用するための家具や遊具群を「どてファニチャー」と定義し、設計および制作、実証実験を行った。制作したプロトタイプは、テーブル兼ベンチ、滑り台、キックピンボール、わなげの4種類である。これらは、併催されるイベントの性質や地域の特性、設置条件を考慮して選定した。
設計における最大の課題は、堤防を管轄する京浜河川事務所との協議の中で示された、堤防構造と芝生を保護するという条件の遵守であった。傾斜面には杭やペグを一切打たず、どてファニチャー下部に重りを積載し、傾斜面上下の平坦部でペグ固定を行うことで安定性を確保する手法を開発した。自治体を通じて占用許可を得て実施した3日間の実証実験では、延べ348名が利用した。アンケートによる総合満足度スコアは5点満点中4.65と高く、平均滞在時間は11分39秒であった。実験中は子供から大人まで幅広い層が訪れ、テーブル兼ベンチは休憩やお絵描き、大人が子供を見守りながらくつろぐ場として機能した。すべり台には子供たちの列ができ、キックピンボールやわなげでは、利用者が自らルールを工夫しながら遊ぶ姿が見られた。これらにより、未活用だった斜面に人々の豊かな対流が生まれたことが示された。
さらに、本研究の成果を社会に還元するため、一連の知見を集約したガイドブックを制作した。ここには設計図面や安全性への配慮、行政との協議プロセスといった実践的なノウハウを掲載している。市民や行政が今後の活動において容易に活用できるよう、専門知識を問わず理解しやすい構成とした。斜面という物理的制約を価値へと転換する本研究が、今後の河川空間の活用に関して、新たな選択肢を提示し、豊かな河川空間づくりを加速させる助けとなることを目指している。
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この作品は Gallery A : A35にてご覧いただけます。
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